日本人拉致について
by
光来人
from
北朝鮮 2002/09/29 23:30:04
日本人拉致について 小泉さんの訪朝が決まって「たぶん・・」と思っていたとおりの悪い結末になってきました。
世界にはその歴史や宗教や社会の状況などによって色いろの価値観が存在し、普遍の正義や不正義というものはないのだという考え方を私は持っていました。
しかし、現代の文明社会に於ける人間観というものにはこの時代に通用する一定の基本があるものなのです。しかし今回のような非人間的なことが明るみに出る事で、「革命」や「人民の利益」という偽善、可笑しさを通りすぎたところの唯我独尊の<偉大な領導者>に関するフィクションのストーリーは美辞麗句で固められただけの畢竟独裁者のためだけの聖典に過ぎなかったという事が分かります。
元来個人の人権とかいのちとかに対する認識というものが全く欠如している権力者にとっては、何でも意のままにという狂気を自己の権力構造の中で増殖させて来たという事なのでしょう。
70年代後半の韓国は成長して来た経済に蔭りが見えはじめ大規模な労働争議が頻発し学生運動が激化するなど社会が不安定化した様相が多く見られました。このことは北の為政者にとって南朝鮮革命のための又とないチャンスと映ったに違いありません。
日本の地方で普通の家庭に育った若い日本人たちを拉致し、彼らに工作員のための教育係りをさせる事で工作員に日本語や文化を身につけさせて日本の旅券を持って南に浸透するというのがその目的だったと考えられます。
またそれらの人たちの中にひょっとして革命家の素養でもある者でもいれば革命の輸出と、1石何鳥にでもなると考えたのでしょう。
すべて意のまま、何をやっても許されるという身勝手な論理の面では最近のエンロンやワールドコムの粉飾決算事件などと共通するものを感じさせなくもありませんが。
北朝鮮封じ込めというアメリカの極東戦略政策に組み込まれた日本の政治史の中に置き去りにされたこの拉致問題があるようにも思えます。それは冷戦構造というよりは僅かな数の日本同胞の命などは政治のメリットには繋がり得なかったという事なのでしょう。
日本政府は30年近くもこのひと達のために何ら手を打って来なかったのはそのためなのです。
ところが北が核開発やミサイル技術を持つようになると単なる貧しい小国として対応する事は出来なくなって来たのです。
「日朝国交正常化の目的は北東アジアの安定と日本の安全保障、ひいては世界平和に資する」からなのです。
北の黒鉛炉型の原発運用を止めさせプルトニウムを産しない軽水炉型に切り替えさせる米韓日の支援機構(KEDO)の設立趣旨もその一貫であるのは云うまでもありません。しかし私は思うのですが、現在日本は12tものプルトニウムを保有しているという事実、このことが将来ともに国際社会にとって安全であるという保障などどこにもありません。
西側に身を置く私たちから見ると北はならず者国家であるにちがいありません。しかし見方を変えると、彼らは建国以来アメリカの徹底した封じ込め政策とその軍事的脅威にずっと晒されて来たという事実を見落としてはなりません。
色いろの力量で劣勢にある自分たちをアメリカをはじめとする韓日の連合がどのような手段で自己の体制を壊しにやって来るか、正に戦々恐々の日々であるにちがいありません。
「拉致問題は存在しない」というのがこれまでの北の一環した態度であったのはご存知のとおりですが、ここに来てなぜキム・ジョンイルが小泉とのトップ会談をやり拉致や工作船の問題をあれほどまですんなり認めてしまったのか、この事について少し考えてみましょう。
色いろの文献を読んでいて考える事なのですが、北の元もとの思惑は次のような事であったろうと思います。
国交を結ぶにあたり植民地支配に対する財産請求権補償の上に願わくば戦後の共和国に対する敵視政策によって受けてきた諸々の不利益に対する戦後補償だって要求したい、ま100億ドル、それもキャッシュで、と踏んでいたふしがあります。
北は拉致問題など存在しないのだと突っぱねておいて、核とミサイルで脅していけば日本は必ず折れてくる、と踏んでいました。しかし日本から伝わってくる情報によると、このままの状態が長引けばそのうち日本のデフレーションだってもっと酷くなって来るかもしれない、植民地統治に対する補償と云っても半世紀をとうに過ぎた今どこまで請求できるか分からない。日本では補償ではなく経済協力などと言い出しているようだ。
ブッシュがイラクに戦争を仕掛けたがっている今、サダム・フセイン政権が崩壊させられたら 次の矛先は核や大量破壊兵器を持っているからという口実で自分たちに向かって来るかもしれない。核査察やミサイル発射実験停止をカードに何がなんでもアメリカを交渉のテーブルに引きずり出さなければならない。
今アメリカとの関係改善をやっておかなければ破綻した経済の建て直しはおろか体制の維持すら困難になって来るかもしれない、そうした焦りもあったに違いありません。
そして何より、まず拉致問題の解決なしには交渉はあり得ない、という日本側の世論と態度が明確に北に伝わっていました。
8人の拉致被害者たちがなぜ命を落としたかという事についてですが。
あの体制にとって少しでも疑わしいものを癌細胞だとしますと、その外科手術はその病巣の周辺を3倍くらいの規模で健康な正常細胞まで無条件で摘出してしまうという事なのですから、そこに情状のような慈悲めいた事や慎重性や公平性というものが入る余地は全くないようです。
ですから例えば住民社会や職場などで個人的な恨みで誰かを貶めてやろうと誰かが企てたとすると、誰それは反逆の言動があったとでっちあげの密告でもすれば最も効果的に相手を排除できるのだそうです。最大の犯罪者として摘発され、そしてその人は場合によっては抹殺されるかも知れないのです。
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