あんたこそ現実を知らないくせに妄言を言うな。よく勉強してから物を言いなさい。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040918ig90.htm>]「何が選手たちの真の望みなのか」
不毛なストに突入した。優勝やプレーオフ進出争いが山場に差し掛かっているペナントレースの、週末の熱戦に水を差されてしまった。
「来季から(球団を)増やす」「最大限努力する」。この文言を選手会は合意文書に入れたがった。
経営側は、これでは来季に十二球団の態勢で臨むことが前提となってしまい、「新規参入球団の公正な審査にタガをはめてしまう」と、受け入れなかった。
この点を「かたくなだ」として、ストの責任を経営側に転嫁する声がある。そうだろうか。
新規参入を目指す球団の「審査」は、慎重の上にも慎重を期す必要がある。経営側がこだわるのは、過去にいくつもの失敗例を知っているからだ。
一九五四年、奇数球団を嫌ったパ・リーグは、財界に働きかけて、強引に「高橋ユニオンズ」を参入させ、八球団にした。手続きは三か月で完了させた。
しかし、経営難から同年暮れ、別会社の支援を受けるようになり、三年後には大映に吸収合併されてしまった。
その後も、一年で経営を放り出した日拓ホームの例や、太平洋クラブで四年、クラウンライターで二年と、目まぐるしくユニホームが変わったライオンズ(現西武)のケースなどがある。
プロ野球界の一翼を担う責任感と自覚が経営者にあるのか、そのための経営基盤は盤石か、これらの点に、慎重な見極めが必要だ。
コミッショナーが提案した「新規加入球団審査委員会」に、来季から、公平で透明な審査を託そう。経営側の考えは一致していた。
選手会の希望で“密室”の中、続けられた交渉は、時間切れ寸前に一度合意に近づいた。新規参入について「最大限誠意をもって審査する」という妥協案だった。だが、「二〇〇五年」の挿入にこだわる選手会の弁護士と一握りの選手によって、議論は振り出しに戻った。
「勝ったのは弁護士だけ。第三者を介在させたのは間違いだった」と、パの元球団代表が分析していた。
選手一人一人に聞いてみたい。来季、絶対にパが六球団でないとダメなのか。それが実現しない限り、ストを続けるつもりなのか、と。
交渉の後、横浜の三浦大輔選手が言っていた。「子供たちが将来、野球をやりたいと思うようにしていかないと」。同感だ。プロ選手が実現した夢を、野球少年たちにも追いかけてほしい。
だからこそ、試合を拒む選手の背中など、子供たちに見せたくないのだ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040917ig90.htm>]「ファン裏切る“億万長者”のスト」
「本日の試合は中止となりました」。各地の球場には、きょう一斉に、こんな看板が掲げられているだろう。
プロ野球の選手会は「スト決行」を決めた。プロ野球史上、初めての事態だ。試合を楽しみにしていたファンへの裏切り行為である。
一週間前、双方が歩み寄りを見せ、ストの延期を決めたばかりだ。その後の話し合いは何だったのか。
選手会は、最後まで近鉄の存続にこだわった。だが、これはそもそも球団の経営事項に関することである。実現が難しいとみると、今度は新規球団の来季からの参入に固執した。
経営側も、そこまでは譲れなかった。新規参入には、きちんとした審査が必要だからだ。
中立的立場にいたコミッショナーが、最終局面で出した調停案も、結果的に選手会に踏みにじられた。コミッショナーは「ストに入れば球団がさらに疲弊し、解散、倒産に至ることもあり得る」と警告していた。
今後、ストの違法性が議論されることになるだろう。試合の中止で経営側は相当の損失を被る。経営側も、当然賠償請求を検討している。
入場料収入や放映権料など、球団側の被る損失は数十億円という試算もある。球場周辺の交通機関や店舗、旅行会社の売り上げなどにも影響するはずだ。
プロ野球には、七十年の歴史がある。日常生活の中で、ちょっとした野球の話題が人と人をつなぐ話のきっかけとなっている。オープン戦、ペナントレース、日本シリーズ、ストーブリーグ、それぞれが四季の風物詩として暮らしに溶け込み、一つの文化を形作っている。
アテネ五輪の間も、夏休みに入った子供たちなど、ファンのために試合は続けられた。百四十試合を滞りなく終え、優勝チームと個人記録を歴史に刻む。そのことに意味がある。ストは、その一ページを空白にしてしまうのだ。
野球界が今後、「労使対決」のイメージに染まってしまうことを恐れる。選手会が、ストの「引き際」を心得ていると信じたい。
ずるずる続けば一九九四年の米大リーグストの二の舞いだ。高額年俸の抑制制度導入を図る経営側に選手側が反発し、ストは二百三十二日に及んだ。多くのファンが離れ、翌年、リストラや年俸カットが選手たちを待ち受けていた。
ファンの期待を思えば、正常なペナントレースに戻す努力を選手会、経営側双方でぎりぎりまで続けるべきだろう。スト中止もまた英断である。