http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110324/dst11032419370057-n1.htm
未曾有の被害をもたらした東日本大震災で、海外各国在住の日本人は、それぞれの国の人々から多くの励ましを受けている一方、多くが大きな精神的苦痛にさいなまれているという。ロイター通信は、日本から数千キロ離れたカナダに住む日本の人々の苦悩の日々を伝えている。
自分を責め続け
「私がこれまで通りの生活を過ごしていていいのかと、ずっと苦しいんです。日本でたくさんの人が辛い目に遭っているのに私は何もできない。後ろめたさを感じます」
トロント市内のカナダ国立バレー学校に通う女性は、今の苦しい気持ちをこう語った。彼女の家族は東京で無事だったにもかかわらず、こうした感情を抱くのは、同様の状況におかれた海外居住者によくある症状だという。
バンクーバーの心理学者のニコル・オーブ博士は、「見捨てられたとか、救いがないと思う感情は、人間にとって最も厳しい感情だ」と説明する。
とくに自分が外国にいて家族が被害にあった人は、帰って助けることができないことで、ひどい無力感に苦しむという。実際は映像や話を聞くだけでも、何らかの人的なつながりがあるほど、心痛が高まるという。
さらに、多くの在留邦人が震災後、しばらくしてから徐々に心労が高まってきたと言う。
トロント在住12年で語学学校の代表を務める女性は、「日本ではよく地震があるから、最初はそんなに大きな地震とは思わなかった」。ただ、後から写真や映像、情報が届くにつれ、非常事態なんだという気持ちが高まったという。
そして福島第1原発事故が起きたことで、心痛はピークとなる。両親が茨城県に住んでいるからだ。カナダに避難してくるよう言ったが、交通も遮断され、ガソリンもなく、未だ茨城県から出られないという。
一方、米ノースカロライナ州に住むある日本人女性は、1995年の阪神大震災の被災者だった。「毎日、写真をみると大きな衝撃を受け、それが私の(心の)傷をえぐるんです。私は(震災の)経験があるから、なおさら(苦悩が)深いのでは」という。
さらに今回、大きな被害が出たのは「前回の震災から学んでいなかったからだと自分を責めている」という。
トロント在住の男性画家は3歳と5歳の子供が受けた衝撃を心配する。何が起こったのか教えるため、数を限って写真を見せているという。
オーブ博士は、こうした心理的苦痛から逃れるには、自分ができることをやるしかないと指摘する。バレー学校に通う女性は震災から1週間後、自分の学校でお菓子のチャリティーセールを行った。「小さなことだとわかっていますが、何か被災者のためにやりたかったんです」
人を助けられるという気持ちが、自分も助けるのだろう。
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