都庁前の花見で300人が反原発ソングを歌った夜
http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20110405/E1301939720954.html
とんでもない一夜だった!
4月3日、東京都庁の真裏に位置する新宿中央公園の一角で、ある集団による花見が行なわれた。
で、その花見の参加者というのが300人。え? おまけにUstream中継でその様子を見ていた人達が3000人。
発端は、書評家の豊崎由美氏のつぶやきだった。石原都知事が「被災者に配慮して花見は自粛せよ」と言ったことに対し、「自分は『天罰』なんて配慮のカケラもないこと言っといて何ぬかす! だったら都庁前で花見でもカマシたろかい!」と、吠えた。
これに賛同したのが映画評論家の町山智浩氏だ。電力が不足していたり、仮設トイレや警備の人員などが東北へシフトされているから、例年通りの花見ができないというのは理解できる。ならば、その範囲内でやればいいのだ。街灯に頼らずみんなで明かりを持ち寄り、ゴミを出さず、できるだけ静かに騒ぐ。そんな花見だってできるはず。
「そもそも辛い時こそ人は酒を飲み歌を歌うのだ。政治家が個人の心の在り方までガタガタ言うな」という町山さんの意見は、まったくもって正しい。
そんなわけで、合同の花見の日取りは4月3日の夕方に決定した。町山氏の友人でもある吉田豪氏、高橋ヨシキ氏らの参加も決まった。この集まりの正式名称はとくにないのだけれど、あえて言うなら「原発推進都知事の花見自粛令に逆らって花見して今こそRCのサマタイムブルースを歌う会」ということになるだろう。
名称にある「RC」というのはRCサクセションのことだ。2009年に惜しくも他界した忌野清志郎が反原発を歌っていた「サマータイム・ブルース」を、いまこそみんなで歌おうというわけだ。
ボランティアでギターを弾ける人を募っていたが、いつのまにかギターパンダこと山川のりを氏の参加が決定していた。これはちょっと大変なことになってきた。だって、山川のりを氏は「忌野清志郎&ニーサンズ」でギターを弾いていた人なんだよ。本物キター!!!! みたいな感じだ。
いまこそ「サマータイム・ブルース」や「ラブ・ミー・テンダー」を歌うときだ。いま歌わなかったら、いつ歌うんだ。清志郎は、いま歌うべき曲を23年前に用意しておいてくれたんだね。
そして当日。
開始予定の午後5時より少し遅れて現場に到着してみると、もうすでにギターパンダさんがエレキギターを抱えて歌っていた。それを取り囲むように集まった人、人、人。この時点で200人は集まっていただろうか。
会場を見渡してみると、大森望氏、柳下毅一郎氏、掟ポルシェ氏らの顔も見える。よく探せば、他にもたくさんの著名人がいたはずだ。そういう人達と、ごく普通の方々とが肩を寄せあって酒を飲んでいる。つまみを分けあっている。そして一緒に歌っている。こんな光景は見たことがない。
パンダの着ぐるみを脱いだ山川のりをさん、だんだん興奮して来て「野球拳をやろう!」とか言い出した。会場のみんなとジャンケン。何を出しても「負けたー!」といって服を脱ぐ。明らかに負けたがっている。上下を脱いでみると、その下には水玉の白いジャンプスーツ。袖にはフリンジが。カルピスプレスリーだ! ネタを仕込んで来てるなー。こんな楽しいものをタダで見せてもらっていいの? と思った方は義援金ボックスに寄付を入れていけるようにもなっている。
数曲やったところで町山氏が登場。軽くスピーチをし、清志郎が「COVERS(「サマータイム・ブルース」や「ラブ・ミー・テンダー」収録のアルバム)」を作ったときのエピソードなどを披露してくれた。その後は清志郎の遺影を持って、みんなと一緒に歌っていた。
背後にそびえ立つのは東京都庁の巨大なビル。
山川のりをさんの演奏が終わっても、あちこちでギターを鳴らして歌い続けている人がいる。ちょうどわたしの目の前には、エキサイトレビューでもお馴染みのゲームクリエイター飯田和敏氏がいた。彼もギターを取り出して歌い始める。清志郎ソングはもちろん、岡林信康の曲まで。さすがは生まれる時代を間違った男。
元々街灯も少ない場所なので、日が暮れるとかなり暗い。でも各自が持ち寄った懐中電灯やランタンを灯しているので、なんともいえない雰囲気になってくる。わたしも飯田氏の譜面に懐中電灯の光をあてていた。
結局、夜8時頃までやって花見は終了した。何曲歌ったのかは覚えていない。ゴミは各自が持ち帰った。
これだけの人数が集まって、何ひとつトラブルが起きなかったのはすごいことだ。集まった人達の意識の高さを感じる。これを「イベント」と呼んでいいのかはわからないが、これまでに見てきたあらゆるイベントのなかでも最高のものだった。
この歴史的な出来事に立ち会えたことを喜ぶとともに、発案し、尽力された方々、そしてこの場所に集まったすべての仲間に感謝しよう。
我々は負けない。