2013.6.4
「命危ない気が」
シンガポールのチャイナタウンにある下級裁判所。5月15日、3階の15号法廷では、ある米国人技術者の遺体の写真がスクリーンに映し出され、犯罪科学捜査の専門家による証言が続けられていた。
「寝室のドアの上部に留め金で黒い革ひもを固定し、白いタオルを首に巻き革ひもで首をつっている」
この技術者はシェーン・トッド(31歳)。
チャイナタウンに近いアパートの自宅で遺体が発見されたのは、2012年6月24日夕のことだ。彼のパソコンからは、両親などに宛てた遺書が見つかった。警察は遺体に外傷がなく部屋に争った痕跡もないことなどから、自殺と断定した。
だが、父親のリチャード(58)と母親のマリー(57)は、息子の死に疑問を抱く。
それは彼が生前、両親に「仕事が嫌だ。中国企業との協力を頼まれた。米国の安全保障を危険にさらすようで、命が危ない気がする」と打ち明けていたからだ。
「息子の死は多くの謎に包まれ、この裁判所での検視審問で死の真相を知りたい。華為(ファーウェイ)との関係もです」
法廷の外でマリーは吐露した。「華為」とは、米国などが安全保障を脅かす存在だとして警戒する中国の通信機器大手「華為技術」のことである。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130604/asi13060413000000-n1.htm