日本の大学卒業後、日本と中国で手広く事業を展開している30歳代の中国人女性から、
日本のビジネス社会では「女性だから得をすると感じることが結構多い」という
意見を聞きました。
国内での議論では一般的に「日本は男性社会で、女性が不利だ」という意見に接することが
多いので、彼女の指摘する「男性に厳しく、女性に寛容な日本社会」という見方には、
ちょっと戸惑ってしまいます。しかし、彼女の話を聞いてみると、なるほどとうなずける点が
多々あります。
「起業した会社の売上が3年間で年商1億円に達した」「上場した」「大手企業の取締役や
部長になった」「銀行の支店長になった」「ネットビジネスが軌道に乗った」など、男性の場合で
あればとりわけ話題にも上らないようなことでも、マスコミのニュースになったりします。
女性の社長をわざわざ「女性社長」と呼ぶのも、日本独特の現象のようです。
実際に、海外メーカーの工場や倉庫に行くと、男女の関係なく、さまざまな現場作業を
担当しているのを目にします。先日も、スウェーデンのポスター製作メーカーの倉庫で、
40〜50キロもある紙の束を肩に担いで運んでいる女性を見た私が、「重くはありませんか?」と
声をかけると、けげんそうな様子で「なぜそんなことを聞くのか?」と逆に質問されました。
最近、頻繁に訪問する中国のメーカーはクルマで空港から往復4時間の道のりですが、
いつも運転してくれるのは経理部門や営業部門の女性です。私の荷物をクルマに積んだり
降ろしたりするのも彼女たちの仕事です。私が「荷物を持ってもらうのは気が引ける」と言うと、
「それは男女差別なのでは」と言い返されました
また、ドイツの中堅家電メーカーの輸出部長である40歳代のドイツ人女性は、年間60日以上も
一人で世界中の見本市に参加し、休憩も取らずに自社製品を一日中実演宣伝しています。
香港の国際見本市会場で、製品の運び込みから搬出まで、すべてを一人でこなしていたので、
手助けしようとしましたが、「私の仕事。余計なお世話」と断られました。
実際に、知人である中国、ドイツ、北欧出身の女性起業家に聞いてみると、自分の母国では
仕事上特別扱いされることはまったく無いと言い切ります。日本で事業を起こしてみて初めて、
「自分が女性だということ」を強く意識させられたというのです。
「男性に厳しく、女性に寛容な日本社会」という彼女たちの指摘が正しいかどうかの判断は
別としても、ビジネス社会で存分に力を発揮できるチャンスを提供してくれる場所ともいえます。
http://nvc.nikkeibp.co.jp/free/COLUMN/20061004/107395/