http://www.hiraganatimes.com/hp/scenes/kiji/kiji236-3j.html
カメレオン女
カール・M・バクスター
しかし、彼女が私の隣に座ったとき、私達はコーヒーには手もつけず激しく抱き合った。
しばらくして、暗闇の中、私の隣で彼女が穏やかに眠っていた。私は彼女が彼女自身を私に捧げたことに気づいた。私が意志を誤解させたからだ。基本的に、このような女と残りの人生を一緒に過ごすことを考えただけでも背中に寒気が走った。実際、自分が求めたものを得たのであるが、今はこの状況にうんざりしている。
数分後、彼女は目覚めると驚いた。私はすでに服を着て、出る用意をしていたが、怒った顔で彼女を見ていた。「どうしたの、カール?」と、彼女は言った。「これだよ!」私は叫んだ。そして、日焼けローションのビンと髪染めの商品を投げつけた。
「嘘をついたな」。初めはショックでだまっていた彼女は、それから怒り始めた。「どういうこと?」と、彼女は叫びながら私に近づいてきた。「お前のきれいなブロンド・シルバーの髪――それは嘘だ!」と、私は叫んだ。「染めただけだ。肌の色さえも偽者だ。そのお前の目は何だ?」私は驚いたような声をあげた。「コンタクトレンズをはずしたわ」と、彼女はどもりながら言った。「私の目は、日本人の黒よ」。「グリーンじゃないの? 背も低いね」。私はあえぎながら言った。裸足だと高い靴をはいたときより6インチ(約15センチ)以上も低かった。
「ごめんなさい、どうしたらいいの?」。「何もして欲しくないさ。だって、お前のしていることすべてが、嘘だから。お前は人間じゃなくて、カメレオン女だ」。私は彼女から離れ、ドアをバタンと閉めて歩き去った。街を歩くうちに、私の怒りはおさまっていた。彼女に対してはもう怒っていなかった。男も女も互いに偽る体質に私は怒っていたのだ。