北朝鮮の犯罪に対する国際社会からの非難の声が一段と強まっている。
国連人権委員会の報告書で、タイ・チュラロンコン大教授の北朝鮮問題特別報告官は「依然として目に余る多くの違法行為が存在する」と分析し、タイなど複数の国にも拉致事件の被害が広がっていることを指摘したうえで、拉致被害国である韓国のこの問題への関心の低さを批判した。
また、米国務省の「二〇〇六年国際麻薬取り締まり戦略報告」は、北によるマネーロンダリング(資金洗浄)や麻薬取引、偽百ドル札製造、覚醒(かくせい)剤密売などの事実を指摘した。「米国に影響を及ぼす北朝鮮による犯罪行為は徹底的に調査し、訴追する」と強調し、他の国にも同様の対応を呼びかけた。
自由と人権、法秩序を重んじる世界の国々は幅広く結束し、国際包囲網を強めて、北のあらゆる国家犯罪を摘発し、封じていかねばならない。
一方、日本の捜査当局による北への監視の目も最近厳しくなっている。国民にとって心強い限りだ。
核開発に転用可能な機器を無許可で輸出していた疑いで、川崎市の大手精密機器メーカーが警視庁の家宅捜索を受けたのをはじめ、生物兵器の製造に転用可能な凍結乾燥機を北に不正輸出したとして、都内の貿易会社が山口、島根県警に摘発された。
さらに、門司海上保安部(北九州)と門司税関は中古漁船を韓国に不正輸出した疑いで、宮城県の海運会社社長を逮捕した。不正輸出された漁船名は、七年前に能登半島沖に現れた北の工作船が偽装していた船名と同じだ。部品が北に渡った可能性があり、追跡捜査を期待したい。
懸念材料は、朝鮮総連の関連施設に対する固定資産税減免措置の見直しが進んでいないことだ。福岡高裁は朝鮮総連を北と一体の組織とみなし、熊本朝鮮会館への減免措置を取り消す判決を出したが、朝鮮総連の地方本部がある四十九自治体のうち三十二自治体が依然、減免措置を続けている。
政府は北への郵便物や不法電波の監視も強化する方針を固めている。拉致事件解決のためには、経済制裁だけでなく、現行法を駆使した総合的な「圧力」が必要である。自治体も、国の方針に沿って力を合わせるべきだ。
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm