中国が開発を中止せず、共同開発のめども立たないのなら、日本も、試掘に向けた環境を整えるしかない。協議の継続が開発の既成事実化につながってはならない。
東シナ海の天然ガス田開発を巡る日中実務者協議が、5か月ぶりに北京で行われた。日本は前回協議で、排他的経済水域(EEZ)の境界と主張する「日中中間線」にまたがる海域でのガス田共同開発を提案した。
中国は新たな提案を示したが、その内容は明らかにされていない。日本案とはかなりの開きがあったとされる。
中間線の中国側で進めるガス田開発についても、日本の開発中止要求に激しく反発し、「日本と争いのない中国近海で行っている」と、これまでの主張を繰り返した。
中国がEEZの境界を日中中間線だと認めるなら、開発海域は中国のEEZとなるが、中間線を認めない現状では係争中の海域だ。関係国に「合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力」を求めた国連海洋法条約に反する行為であるのは明らかだ。
日中両国は、対話による解決を図ることで一致した。だが、協議を重ねるだけで前進を図れるかどうか疑問である。
二階経済産業相は「試掘の道は取らない」と言う。二階経産相はかつて、中国の江沢民・前国家主席の講話を刻んだ石碑を地元に建てようとした親中派だ。二階経産相の就任を中国が好感し、日本に歩み寄る可能性もある、と期待する向きも国内にはあった。
だが、今回の協議でも中国は開発中止要求を拒否した。前回協議の後、ガス田とガス田をつなぐパイプラインの敷設を完了させるなど、着々と開発を進めている。宥和(ゆうわ)的な姿勢だけでは、事態の打開は期待できない。
今回の協議も、本来なら昨年10月に開くはずだった。中国は、小泉首相の靖国神社参拝というまったく別の問題を持ち出し、協議をここまでずれ込ませた。
中国の姿勢に開発の既成事実化を図る意図がうかがえる。日本も、当然の主権の行使として、日本側海域で試掘に向けた準備を粛々と進めるべきだ。
自民党は、試掘の際の安全確保を目的とした法案を今国会に提出する考えだ。民主党も先の国会で海洋権益関連法案を提出している。双方が歩み寄って、できるだけ多くの賛成で法案を成立させるのが望ましい。
主権と権益を守る日本の意志を明確に示すことが、国際ルールに反した行動を中国に自制させることにつながる。
(2006年3月8日1時34分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060307ig90.htm