No.10914
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「イスラム国」は、当面の間は存続し続ける 米国や中東諸国にとって好都合な存在に
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無回答 2015/08/16 11:30:32
「イスラム国は、あと5年はもつでしょうね。下手すりゃ10年いきますよ。だってあれは誰にとっても都合のいい存在ですから。この辺の事情は現地では常識ですけど、日本人は意外と知らないみたいですね」
中近東の専門家で、今もペルシャ湾岸に駐在している日本の商社マンの言葉である。
資金源も乏しく、空軍力や近代兵器も持たない盗賊集団のようなイスラム国を、なぜアメリカは殲滅(せんめつ)しないのか。疑問に思っている人は多いだろう。アメリカの軍事力をもってすれば、そんなことはいともたやすいはずである。
その理由についての有力説は、中近東にイスラム国という不安定要因を残したままにして、イランなど周辺国が彼らとの恒常的な戦いで消耗する状態を継続させるのがアメリカの真の狙いだというものだ。
2006年3月に、シカゴ大学とハーバード大学の研究者が発表した「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策(The Israel lobby and U.S. foreign policy)」という論文(2007年に書籍化され、同名の邦訳版もあり)を読むと、その辺の事情がよく分かる。アメリカの中東政策は、正義のためでも、人道のためでもなく、イスラエル・ロビーによって決められているという内容だ。そして彼らイスラエルの狙いは、周辺アラブ諸国(特に、イスラエルが最も警戒するイラン)を弱体化し、国の安全保障を確保することだ。
「泣く子も黙る」最大・最強のイスラエル・ロビーは「アメリカ・イスラエル広報委員会」(略称AIPAC)だ。ワシントンの国会議事堂近くに100人以上の職員と全米に10万人以上の会員を有し、年間2,000回以上国会議員と会い、100以上の親イスラエル法案を支援している。
日本では創価学会や日本医師会、日本遺族会などが収票力によって、政治に影響力を行使する。AIPACも、親イスラエル議員には資金援助や投票を呼びかけ、反イスラエル議員を徹底的に攻撃する。
かつてキッシンジャー国務長官が中東和平を画策したとき、イスラエルが非妥協的で協力しなかった。これを民主党のチャールズ・パーシー上院議員(イリノイ州)が厳しく批判したところ、たちまち彼の事務所に親イスラエル選挙民から4000通の抗議文と2000通の抗議電報が届き、各地で追い落とし集会が相次いで開かれ、1982年の選挙でついに落選させられた。
アメリカがイスラム国を好ましいと思う理由はもう一つある。軍需産業である。大規模な紛争があることは、アメリカの軍需産業にとってつねに望ましく、中近東では1948年に勃発した第一次中東戦争以来、第二次〜第四次中東戦争、イラン・イラク戦争、湾岸紛争、イラク戦争と、10年に一度は大きな紛争が起き、軍需産業が売り上げを伸ばす機会を提供してきた。
戦闘機から発射されるミサイルは一基数千万円〜1億5000万円、軍艦・潜水艦から発射されるトマホークミサイルは一基1億5000万円くらいする。イスラム国が存在するかぎり、彼らは商売繁盛なのだ。そしてイスラエル・ロビー同様、軍需産業はアメリカの議員に多額の献金をしている。イスラム国との戦闘において、アメリカは2003年のイラク戦争のときのように陸上部隊を派遣せず、主に空軍による支援をしている。
これは軍需産業から見ると、陸上部隊の駐留経費に莫大な税金をかけてもちっとも儲からないのと違い、空軍がミサイルや爆弾をどんどん投下してくれるので、理想的なパターンである。
イランを弱体化しておきたいのは、イスラエルだけでなく、サウジアラビア、クウェート、UAEなどGCC(湾岸協力会議)6カ国も同じである。1979年にイスラム革命で成立した現在のイランは、シーア派革命の輸出をもくろむ地域の大国で、人口や軍事力もはるかに小さく、宗派も異なるスンニ派の湾岸諸国は常にその影に怯えてきた。
そもそも、1981年にGCCが設立された際の主要目的の一つが対イラン防衛だった。GCC6カ国は表向き対イスラム国有志連合に参加しているが、(政府か個人かは定かではないが)それらの国々からスンニ派のイスラム国に相当な資金援助が流れている、と現地ではいわれている。
さらにトルコにとってもイスラム国は都合のいい存在である。こちらはクルド人問題の関係からだ。トルコは国内に千数百万人のクルド人を抱え、1923年の共和国建国以来、シリアやイラクのクルド人と連携した彼らの分離独立運動やテロに頭を悩ませてきた。男子皆徴兵制を持ち、65万人の兵員を擁する中近東屈指の軍事大国であるトルコが本格的に参戦すれば、イスラム国など簡単に壊滅できるが、アメリカ主導の有志連合に名前を連ねてはいるものの、先月まで空爆に参加せず、国内の基地使用も許可していなかった。
それはクルド人問題があるからだ。シリア北部でイスラム国と戦っているのは、アメリカなどが支援するクルド人組織・民主連合党(PYD)だが、彼らが勝利してイラク北部のように自治権を獲得したりすると、クルド人が多く住むトルコ南東部の分離独立運動に発展しかねないとトルコ政府は警戒しており、むしろ彼らがイスラム国との戦いで疲弊するのを望んでいる。
以前、山口組系暴力団後藤組(静岡県富士宮市)の後藤忠政元組長の著作を読んだとき、警察が暴力団を殲滅しようと思えば簡単にできるが、あえてそれをやらないのは、暴力団の存在が警察にもメリットがあるからという趣旨のことが書いてあった。
イスラム国とアメリカ・中近東諸国も、実は似たような関係なのだ。ただし去る7月に、トルコ南東部でイスラム国によると見られるテロが起き、連立政権に対するクルド人有権者からの批判が強まった。これを契機に、トルコ政府は空爆参加と有志連合の基地使用許可に踏み切っている。このように、この種の“均衡”は、様々な要因の変化で崩れる可能性があることは留意を要する。
東洋経済オンラインの記事。怖すぎ。
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