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セブン‐イレブン(以下、セブン)商法の本質は加盟店オーナーを食い物にするフランチャイズシステムにあることをこれまで指摘してきた。しかも、オーナーたちは借金まみれになって自殺にまで追いこまれるケースも続出しているという。
「セブン‐イレブン加盟店オーナーの自殺の噂は、私もこれまで何件も耳にしていた。この一年の取材中に少なくとも、六、七件になろうか。埼玉(二件)、群馬、宮城(三件)、東京・世田谷......なぜ、オーナーたちは自殺に追い込まれるのか」というのは『セブン‐イレブンの罠』(渡辺仁/金曜日)だ。
とくに宮城県の加盟店オーナーの自殺は3件と多い。実は宮城県は北海道、東京都に次いで人口あたりのコンビニ数が多い激戦地区。2000年代にセブンがドミナント(高密度多店舗)出店方式を展開、たとえば、人口三万人のエリアにセブンだけでも5店、他のコンビニもあわせると13店とコンビニ過密地帯を生み出しているのだ。
当然ながら売上も思ったように上がらない。慢性的な赤字経営が加盟店オーナーを苦しめるようになる。しかも、コンビニ経営では毎日、売上金の送金が義務づけられており、店側に現金は残らない。現金がなければ、信用もなく銀行から追加の融資を受けることも不可能なのだ。売上金の一部を生活費にあてると、本部から店舗経営指導員が飛んできて、実際に送金するまで連日監視されるのだ。
「本部社員が数人すっ飛んで来て二四時間の張りつき監視態勢がとられる。金庫のカギを取りあげて『金庫管理』までする。二四時間監視が九カ月続き、警察まで出動し傷害になったケースもある」(同書より)
さらに「契約を更新しない」ことを宣告されることも。契約の更新がなければ、店も取り上げられ、それまでのセブン本部との取引で生じた「オープンアカウント」(取引勘定)が清算され、莫大な借金だけが残される。なお、このオープンアカウントでは通常は利息が発生しない買掛金にまで5〜7%の高い金利をつけており、本部への借金は膨らむばかりなのだ。
「セブン本部のウラもオモテも知るベテランオーナーが、こんな言葉を囁いた。『四生五殺って知ってますか――』私もこの言葉の意味は、すでに二人の人間から聞いていた。『四〇〇〇万までは借金をふくらませて働かせる。五〇〇〇万円までいっちゃうと自殺するから(それ以上の借金はさせない)。本部の上の方で公然と語られている言葉ですよ。真偽はわからないウワサですから』」(同書より)
04年10月に自殺した宮城県の、ある加盟店オーナーAさんのケースではこうだ。昔から家業でプロパンガス販売店や酒屋をやっていたAさんは1990年ごろ、土地・建物は自前の「Aタイプ店」を開業。しっかり者の妻と一緒に店を切り盛りし、当初は順調だったが、近隣にセブン本部にドミナント出店され、経営が傾くようになる。一家の手元に残る年収は200〜300万円。折悪しく、娘は大学生、息子は高校生と学費がもっともかかる時期に重なってしまい、Aさんは生活費を稼ぐために夜勤明けにアルバイトもすることになる。
「夜勤明けに五〇、六〇キロ離れた蔵王まで通い、スキー客誘導員のアルバイトを掛け持ちしていたというのだ。コンビニは年中無休の二四時間営業だ。バイトが欠勤したら急遽、オーナーみずからがシフトに入らなければならない。ふつう、このシフトを回すだけでもクタクタになる。だからコンビニオーナーはストレスや過労で脳卒中になると囁かれている」(同書より)
精神的に疲労困憊したAさんは売上金の一部を生活費にあててしまった。すると、店舗経営指導員による監視が始まるとともに、「契約を更新しない」ことを幹部から宣告されたのだ。Aさんは「本部からは再契約されないとなったからもう終わりだわ」とオーナー仲間に言った数日後に自宅兼コンビニ店舗の2階階段で自ら首を吊った。
同様のケースは「週刊金曜日」14年1月31日号「セブン‐イレブン"鈴木帝国"の落日 連載第1回 妻はなぜ自殺したのか」でも紹介されている。
「2013年1月、東京都内のセブン‐イレブン加盟店オーナーの妻が自殺した。鬱病を患っていた。妻はドミナントで減収になった上、契約更新ができるか悩んでいた」「妻は夫を信頼し一身を捧げて店を守ってきた。全国のセブン‐イレブンのオーナー夫妻は、24時間年中無休、夜中でも家族を犠牲に働いている。妻の立場はとくに弱い。それゆえ店をやっていけないと思うとなおさら不安や悩みが強くなるのだ」(同記事より)
これでは加盟店オーナーは「一国一城の主」どころか、「名ばかりオーナー」にすぎない。先ほど紹介した『セブン‐イレブンの罠』(渡辺仁/金曜日)では契約時に加盟店オーナーは全財産を報告する必要もあるという。
「契約時にオーナー夫妻の総資産(預金額・不動産・生命保険・学資保険・株券・借金額・ローン状況)を洗いざらい提出させる。フランチャイズ契約は、独立事業者(セブン‐イレブン本部)対独立事業者(加盟店オーナー)の契約である。それなのに、なぜ、究極の個人情報の『全財産』まで丸裸にされるのか。(略)『これじゃあ、最初から夫婦ともども財布のヒモを握られたようなものだ』。この狙いはなんなのか?そう不審がるオーナーが多いのだ」(同書より)
そのうえ、強制的に「セブン‐イレブン加盟店共済制度保険」に加入させる。
「この共済はすべてのもの(傷害、火災、病気、死亡、所得補償など)が網羅されている。たとえば、オーナーが(閉店して)出ていっても、損害賠償金はオーナーに払わないでセブンがネコババする。殺そうが、何しようが、(債権は)とりっぱぐれがないようにしている」(同書より)
しかも、その保険代理店は親会社のセブン&アイ・ホールディングスグループの「株式会社ヨークインシュランス」なのだ。
「気の弱いオーナーなどが自殺したら保険金で負債を全額清算してしまう(略)これは明らかに巨大企業ぐるみの、赤字転落(自殺)が予想できるのにドミナントで追い込む『未必の故意』に当たるのではないか。そこにはあえて言えば『フランチャイズ版保険金殺人』とでもいうような、暗黙の作為が仕組まれているように感じる、と言われても弁解できないだろう」(同書より)
同書はセブンのビジネスモデルを小売業ではなく、「小売業の形をとった店の売上金の『毎日集金ビジネス』」だと指摘する。
「全国一万二〇〇〇店からカキ集めた、年間『二兆七六二六億円』(全チェーン売上高)の『売上金運用ビジネス』である。そして夫婦を『オーナー』に仕立てて二四時間・年中無休で働かせる『雇用偽装(労働力搾取)ビジネス』である。その根幹を支えているのが『疑惑のセブン‐イレブン会計』なのである。その中には加盟店オーナーからどう売上金と利益を吸い上げ、その原資をどうセブン&アイ・グループ企業で運用し最大化させるか、全知全能をふり絞った仕掛けがいくつも隠されているのだ」(同書より)
想像以上に悪質なセブンのフランチャイズ契約。しかし、こういう実態を詳しく指摘しているメディアは「週刊金曜日」以外存在していないと言ってもいい状態だ。ほとんどのマスコミはセブンの広告や販売ルート支配によって沈黙せざるをえなくなっている。次回はそのへんをもう少し詳しく掘り下げてみたい。
(小石川シンイチ)