日本における課税に関してですが、まずは非居住者か否かというところで分岐されてきます。非居住者(や外国法人)の場合、課税は「国内源泉所得に限る」ということになっています。
翻訳が「国内源泉所得」の対象かどうかですが、所得税法第161条7項ロで、「日本国内で業務を行う者からの支払で、著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む)の使用料又はその譲渡の対価については日本国内所得として源泉徴収の対象とする」となっています。
著作物等の翻訳をした場合、その翻訳文は二次的著作物とされます。(著作権法) なので、翻訳に関する対価は著作物の権利譲渡の対価、ととらえられるので国内源泉所得という扱いになり、源泉徴収されます。
また、非居住者等に対して国内において源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、所得税を徴収し納付する義務があります。(法人の場合のみ義務が生じ、個人が支払いをする場合は徴収する義務はありません。)
これらの所得は、非居住者であるので源泉徴収されていても日本で確定申告する義務は無く、居住国の税法に従って、全世界分の所得の申告をすることになります。
日本とカナダでは、こういった二重課税の回避のため租税条約を結んでいます。今のところ日本とカナダ間では、租税条約に関する届出書を提出した際10%の軽減が受けられます。(アメリカやイギリスの場合は最近税法が変わり免除となったようです。)
租税条約に関する届出書を出さなかった場合は、上記に書いた「日本国内で業務を行う者からの支払で、著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む)の使用料又はその譲渡の対価については日本国内所得として源泉徴収の対象とする」の対象税率が20%ですので、20%の源泉徴収となります。
源泉徴収した日本の法人は支払いをした個人事業主に対して支払い調書の発行、および最寄の税務署で納税証明書(日本語と英語併記のものなので、Revenue Canadaにコピーを提出する際は翻訳など必要ありません。)を発行してもらう必要があります。
カナダで全世界分の所得の税金申告の際、源泉徴収されていない金額(税引き前金額)を売上としてそこから経費や減価償却費などを引いた金額(課税対象額)を所得として申告し、それと同時に外国税額控除(Foreign Tax Credit)の申請をします。(T2209[
http://www.cra-arc.gc.ca/E/pbg/tf/t2209/README.html]を記入します。)
これで政府の方がForeign Tax Creditを計算し、差引があればカナダ政府からいくらか税金が返ってくるようになります。
>それとも、年度末の源泉徴収票を自分で英訳して、
>カナダの確定申告書類に添付すればよろしいのでしょうか
源泉徴収票は日本に居住者だったためもらっていたのだと思いますが、これは、非居住者に対して源泉徴収されたために発行される納税証明書とは違います。上記にも書きましたが、この納税証明書(日本語・英語併記のもの)は支払いをする日本の法人が最寄の税務署に行って発行してもらわなければならないもので、カナダにおいて税金申告する際にForeign Tax Creditを適用してもらうため必要です。また、この納税証明書(コピー)はカナダで税金申告する際、T2209フォームと一緒に提出します。
>(私の場合、一度に受ける仕事の支払いが100万以下ですので、
>いつも10%源泉徴収だけでした)?
トピ主さんが日本の居住者だったときは、100万円以下なので10%源泉徴収で良いですが、(日本の居住者に対して源泉徴収する税額は、原則としてその支払金額の10%となります。支払われる金額が高額になっていくと税率も10%から上がっていきます。)
非居住者の場合、国内源泉所得で翻訳に関する源泉所得税率は20%です。10%の税率になるには、日加間の場合、租税条約の届出書を提出しなければ10%の軽減になりません。ちなみに租税条約の届出書はトピ主さんの方から支払いをしてくれる法人に、支払いが行われる以前にInvoiceなどと一緒に提出するものです。これをもって、源泉徴収する法人は翌月決まった期日までに税務署に源泉徴収した金額と一緒に収めなければなりません。
日本の法人が源泉徴収の対象となる所得を税務署に支払う際、源泉徴収を怠った場合には、納付税額のほかに不納付加算税として、納付税額の10%(税務署からの通知を受ける前に納付した場合は5%)がペナルティとして課されます。