「野村克也さん一家の場合、実子と養子、前妻の子の3系統の子供がいるわけですが、民法では血のつながりや生まれた時期にかかわらず、子の相続の権利は平等です。したがって、それぞれが野村さんの遺産の4分の1ずつを相続することになります」(司法書士法人ABC代表の椎葉基史さん)
とはいえ、それは法律上の話。そうした場合は、関係性が複雑なだけにトラブルも多いという。
「問題は、親との関係性によって情報格差が生まれることです。たとえば野村家の場合、夫妻といちばん関係が深かったと思われる克則氏が細かい情報を知っていても、ほかの兄弟に共有されているとは限りません。話し合いの場では、情報を持つ人の立場が高くなります。ほかの兄弟から『相続財産は本当にそれだけなのか』『生前にお金を動かしていないのか』と疑念がわいても、立証するのはハードルが高く、わだかまりが残りやすい」(前出・椎葉さん)
親が存命中に関係が深い子供に生前贈与をしたり、預貯金を子供名義の口座に動かすなど、いろいろと策を講じている例は実際に多い。
「そのようにして得た資産は、法律上は『特別受益』と呼ばれ、その分を差し引いて相続の配分をすべきです。しかし、贈与を受けた子が『何も受け取っていない』と説明し続ければ、ほかの相続人にはどうしようもないケースがほとんどです」(前出・椎葉さん)
遺言書の存在がトラブルに発展することもあるそうだ。
「私が相談を受けた中では、ある前妻の子は父から『遺言書を書いてあるから大丈夫』と聞かされていたのに、実際に父の死後、現在の妻との子から『遺言書などない』と突っぱねられたという例が実際にありました。
公正証書遺言であれば、公証役場で調べたらわかります。そのケースでは自筆のものだったようで、現在の妻との子が不利な内容の遺言書を見て破棄したようです。前妻の子はどうすることもできませんでした」
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