日本人年金移民
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年金
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無回答 2006/01/02 16:04:51
このサイトでよく年寄りになって日本へ戻ると寝言みたいな事堂々と行ってる人への速報です。
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ベランダからマラッカ海峡の青い海が見える。マレーシア半島西岸のペナン島。39階建てマンションで末永千明さん(63)が独り暮らしを始めて半年になる。
「できればずっとこっちにいたい。ゴルフも始めたのよ」。千葉県君津市で事務員をしていた58歳の時にリストラされた。夫とは早くに死別。娘は結婚した。3年半ホームヘルパーをしたが、介護中に手首を骨折し、元のようには動かない。年金は月13万円。娘の世話にはなりたくない。
「生活に余裕はないし、日本に一人いるのも……」。不安はあったが、インターネットで移住先を探した。
3LDKの家賃は4万8000円。外食中心の食費は約2万円で済む。ライスとチキンに偏るので生野菜だけは買って煮る。月10万円ちょっとで暮らせるが、日本の住民税や保険料を払えばぎりぎりの生活だ。
ペナンは5年の長期滞在ビザで暮らす人がこの数年で急増し、日本人だけで400人ともいわれる。末永さんのマンションも3年前の2世帯から今は30世帯近くになった。事業に失敗して年金生活の計画が狂った老夫婦、会社をリストラされ、年金をもらえる60歳まで安く暮らすために来た世帯……。年金不安が海外移住に拍車をかけている。
マレーシアは年金が25万〜30万円の「中流の上」の世帯を対象に「日本の2倍豊かな生活ができる」と宣伝してきた。だが、生活保護世帯からの問い合わせも来るため、軌道修正を検討している。単身の男性が認知症になり、日本に送り返されたケースもある。政府観光局の関係者は心配する。「いずれ日本人の路上生活者が出かねない」
総務省の04年全国消費実態調査によると、主な収入が年金という夫婦2人世帯では、1カ月の平均消費支出額は約25万7000円。経済的にゆとりのある老後を送るためには、月に約37万9000円は必要(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」)というデータもある。一方、夫婦2人で国民年金に40年間加入した場合、年金は月約13万2000円にとどまる。
タイ北部の古都チェンマイ。神戸市出身の元会社員(64)と妻(55)は03年夏から年の半分を現地のゲストハウスで暮らす。年金は月約23万円。地元ラジオでDJをしている夫は「少ない貯金を取り崩さずに年金だけで生活するのが目的」と言う。ぜいたくしなければ月10万円前後で暮らせる。だが、年4回日本と往復する航空運賃の負担が重い。
夫「往復の回数を減らしてもらわないと」
妻「え? そんならもうこっちに来ないわよ。こないに節約して暮らしてたら息が詰まるわ」
タイも日本からの「年金移民」が増えている。日本での長期滞在ビザ(1年)発給が02年は69件だったが、04年は過去最高の203件に達した。長期ビザを取れない低収入の人も増えている。
アパートで独り暮らしをしている元会社員の男性(71)は年金が10万円を切る。日本の市役所で老人ホームを紹介された。2人部屋で夜は外出禁止。迷ったが、断った。今の家賃は約2万1000円。血圧計の電池代まで毎日家計簿につけ、残った分は貯金する。
時々食べたくなる塩こんぶや乾燥じゃこは年に一度帰国した時、スーツケースに詰め込む。「暇でね」とつぶやいて言い直した。「いや、こっちの方がずっといい暮らしができる。NHKの相撲も見られる」
記者(40)はチェンマイの郊外で、月約1万円でひっそり暮らす男性(58)にも出会った。よれよれの紙を財布から取り出して見せてくれた。社会保険庁のホームページで調べた年金額だ。「60歳 103万円」。あと2年、なんとか生きなければならない。この金額ならタイで暮らしていゆける。
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朝8時、マリーナに隣接するゴルフ場に電動バギーで出かけ、昼までラウンドするのが夫婦の日課だ。オーストラリア・ゴールドコースト在住の元会社員(64)と妻(59)は02年に約2000万円でコンドミニアムを購入した。有名タレントも別荘を持つ人気のリゾート地だ。
ゴルフ代は月3万円で済む。「日本で週に1回行っていたら子供たちに遺産も残せない」と考え、移住を決めた。
大阪の大手企業を01年に60歳で定年退職した。年金は年計290万円。満額で受け取れる最後の年だった。別に企業年金が300万円ある。退職者ビザの取得に必要な預金約2800万円の利子も毎年5パーセントつく。「現役で働いている人より収入はいいかもしれない。これから定年を迎える人には申し訳ないくらい」
豪州は昨年7月、物価と不動産価格の上昇を理由に退職者ビザの条件を厳しくした。都市部では約6500万円の公債購入が求められ、富裕層以外の移住はますます難しい。夫婦のコンドミニアムは今、買った時の2倍以上に値上がりした。
「年金移民」の動きは日本でも起きている。
「何かの間違いでしょ」。東京都多摩市の鈴木康徳さん(65)は思わず聞き返した。60歳の定年を間近に控えた5年前。年金額の確認に行った社会保険事務所で職員は「18万円です」と答えた。予想より10万円も少ない。
夫婦2人暮らし。家賃約7万円の旧公団住宅から、あわてて都営住宅に申し込んだ。1年待って近所の多摩ニュータウン貝取団地に引っ越した。家賃は約1万円だ。
都住宅供給公社によると、都営住宅で高齢者や母子家庭を対象にした応募は、05年の1回目(年2回)で60歳以上が4588世帯に上り、3年前の倍に増えた。
鈴木さんは工場勤務やタクシー運転手をしながら38年間、厚生年金の掛け金を払い続けてきた。「体を壊すまで働いてまじめに納めてきたのは何のためだったのか」
老後の不安は若い世代ほど深刻さを増していく。34歳の記者が社会保険事務所で年金の予想受取額を尋ねた。扶養家族はいない。今の給与が仮に続いたとして60歳で退職した場合、年210万円前後(65歳から受給)になるという。
職員は3回、念を押すように付け加えた。「社会情勢の変化もありますので、あくまで仮定の数字です」
=つづく
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