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お笑い道場
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No.270
創る小説〜在る物の行方〜
by トロント from トロント 2007/01/03 00:46:34

成田空港の待合室で大学時代の友人の迎えを待つ間、鞄から取り出した科学誌を適当に広げた。風呂敷のようにぺらぺらな宇宙が描かれた絵図の鮮やかな三原色が残像として目の奥にこびりついた。中島郁人は左腕を数回優しくさすった。3年ぶりの帰国で気持ちが高揚し、体に熱を帯びているのがわかる。待合室から見下ろせる空港ロビーの入り口付近に目をやっていると、後ろから呼ぶ声が聴こえた。
「よう。」
山田唯の耳に残るような野太い声が響き、私は顔を上げた。鋭い精悍な顔つきと反した彼のでっぷしとした体つきと、のそのそと歩く癖は今も変わっていない。彼と出会ったのは大学一年のときであった。

Res.1 by トロント from トロント 2007/01/03 00:50:25

彼と出会うこととなった”ブラウニーの会”と称されるこのただの飲み会は、二ヶ月に一度主催され、幹事は我々K大学の文学部でするのが常であった。他大学からの参加者も大いに歓迎されているかなり一種の交流会ともなっていた。そこで行われることはただの飲み会のそれと変わりは無いのだが、必ず最後には他学部から他学部の学生へと何か一つ質問をし、質問された者はそれに対する答えを90秒以内に出さないと一気飲みをさせられることになっていた。  
Res.2 by トロント from トロント 2007/01/03 00:57:52

その日はT大学の学生が二人と他大からの学生も何人か参加しており、総勢20人ほどにまでになっていた。そのうちの一人が私にこんなことを質問した、「あなたの大学にある窓の総数を正確に答えよ。」頭を巡らせて考えたが、どうもそれらしい答えが見つからずに一気飲みに終わった。答えが出るまで順繰りと同じ質問は有効とされるため、はじめの4人がこの罰をうけることとなった。盛り上がるどんちゃん騒ぎが5人目となり一蹴された。それはまさに一蹴であった。まず参加してこない医学部の学生が来ており、それが山田唯だったのだ。彼が行ったあまりにも明快な回答法に質問者もその場に居合わせた誰もがうなり声を上げて彼を賞賛した。  
Res.3 by トロント from トロント 2007/01/03 01:08:36

山田はK大学医学部を優良な成績で卒業したにも関らず、在学中に所属していたSF同好会の同人誌で連載した-鉄腕アトムが残した負の遺産-というエッセーが徐々に注目され、ある子供向け科学雑誌にそのエッセー集が月連載されたことがきっかけで脚光を浴び、SF作家として進みだした。現在は科学評論家としても時たまメディアに顔を程である。  
Res.4 by トロント from トロント 2007/01/03 01:15:10

同大学の文学部英文科の学生であった私は、彼の非凡な文学の才能に驚嘆したというよりは、一介の理系人にこれほどまでの作品が書けるものなのかと、才能としての自信喪失と同時に、彼に対しある種の畏怖が生まれたほどだった。当時この彼のエッセー集は発行部数の少ない同人誌のなかでは極めてまれな増刷が繰り返され、各業界からも異例の激評を集めた。ちょうど時代は鉄腕アトム誕生世紀の移り変わりに相重なり、各マスコミもこぞって注目し、先鋭なるSF作家として当時は時の人でもあった。  
Res.5 by トロント from トロント 2007/01/03 01:25:47

結局彼は医学部を秀でた成績で卒業した後、医療の道には進まずに作家となった変わり者である。誰一人にも口にしなかったが、小説家となるのが夢だった私はどれだけこの彼の秀逸した才に憧れを抱いたことか。笑ってしまう話だが、そんな私は今は科学者となってしまった。  
Res.6 by トロント from トロント 2007/01/03 01:38:52

在学中に雑誌翻訳のバイトをしていた私は、仕事の関係で行ったパーティ会場で知り合ったある著名なイギリスの作家との交流がきっかけとなり、特任教授として彼が勤めるカナダのT大学へと留学することになった。はじめは一年間の留学のつもりで休学して行ったのだが、結局はK大学を退学し、思い立ったように工学部へ入学という逸脱したコースで卒業後、同大学院工学研究科博士課程を修了し現在はB工科大学で研究者として働いている。  
Res.7 by トロント from トロント 2007/01/03 01:46:09

今回の久しぶりの帰国は、私が時たま寄稿している出版社からの「ロボット技術の行方」という若年層向けの対談依頼を受けてのためである。受ける決め手となったのは、今回の対談ホストを努めるのがあの山田唯であったことと、そしてその彼が私との対談をという事だったらしいからだ。  
Res.8 by トロント from トロント 2007/01/03 01:59:01

「いやいや久しぶりですな山田様。残念ながら相変わらずまだ売れっ子のようで何よりだ。」私達は久しぶりの再会に少しはにかみ互いに軽く握手を交わした。  
Res.9 by トロント from トロント 2007/01/03 20:35:03

対談は順調のうちに終わった。
久しぶりに二人で飲むことになったのだが、彼が少し遅れるということなので私はその間一人で街に繰り出した。  
Res.10 by トロント from トロント 2007/01/03 20:37:48

「懐かしいな」大学時代からここら一帯は若者をターゲットにした店舗展開が繰り返されていたので、久しぶりに歩いた街ではあったが特に感慨深いというものはなかった。それでも少し裏通りになると、昔は昼間ひっそりとしていたスナックやパブ通りが今はお洒落なブティックによって若者達の行き来きで賑わっていた。  
Res.11 by トロント from トロント 2007/01/03 20:39:11

私は思い出したように大学時代にたびたび通った銀次郎というホルモン焼専門店を探した。  
Res.12 by トロント from トロント 2007/01/03 20:44:59

ここのホルモン焼きは非常に旨かった。注文するものは決まって爆弾焼きと呼ばれる塩ホルモンであり、名前の由来は赤白くなるまで直火された網の上に豪快にホルモンをのせるため、急熱で炙られたホルモンがバッチバッチと弾けて物凄い薫煙を上げるためだという。火力の強い炭火で炙られることで余分な脂が焼き飛ばされ、ホルモン特有のくさみが何ともいえぬ香ばしさとなって食欲を誘う。軽く下味された絶妙な塩加減、それを噛みほぐすときの得も言われぬ濃厚な美味さ、それを冷えたビールで喉の奥に流し込む、今でも思い出せる。  
Res.13 by トロント from トロント 2007/01/03 20:49:38

裏通りを抜ければ映画館が見えてき、その角を曲ると銀次郎の看板が見えるはずなのだが、当時映画館があったところには派手やかなパチンコ店が建っており、銀次郎があったと思われる一帯は大型の立体駐車場になっていた。少し歩き回って探してはみるものの、やはり銀次郎はなかった。  
Res.14 by トロント from トロント 2007/01/03 20:52:03

「ホルモンはなぁ、わしら関西人が考えたんや。」たっちゃんが言った。
「またか!いいから食え!」純一がいつものように怒鳴る。酔いが回ると始まるいつもの見慣れたやりとりに我々は声をあげて笑い出す。  
Res.15 by トロント from トロント 2007/01/03 20:58:45

「いいかたっちゃん、何度も言うようやけどホルモンっつうもんは生理学上の用語や。ただの用語や。”生理活性物質”勉強したやろが、ホルモンや。体を活性!元気になったろ!つう祈りを込めてホルモンという名をこの食いもんにぶち込んだんや。そもそもこんなけったいな名前がぎょーさん広まったんは戦後や、どいつもこいつも元気になりたかった時代や。」と、自称10歳の時にメンデルを知らずして遺伝法則を発見したという哲学科の純一が言った。  
Res.16 by トロント from トロント 2007/01/03 21:05:33

「裏切り者め!」たっちゃんは酒に酔うと通常でも強い口調が俄然強くなるのだが、それがまた面白くて笑いを誘った。
「純ちゃんの薀蓄はよう聴かん!ホルモンっつぅもんは気色わるぅてぎょーさん捨てられたんや、そやから”捨てるもの”、関西弁での”放るもの”ほうるもん”やないか!ホルモンは関西人のユーモアの証や!」たっちゃんはその日から時たま揶揄されてホルモン様、ホルモン軍曹、などと呼ばれたりしたものだった。  
Res.17 by トロント from トロント 2007/01/03 21:13:19

たっちゃんが死んだのは大学を卒業して二年後であった。仕事でのストレスから睡眠薬の多量摂取を繰り返していたらしく、中毒となってのことだったと純一からの手紙が届いた。「見舞いに行く度に、”自殺はあかん”とたっちゃんが言いました。たっちゃんなんかが自殺で死ぬわけないんです。」と文末に書かれていたのが今でも頭に残っている。純一とはその手紙以降何度かメールでのやりとりを始めたが、しばらくして彼からの連絡が一切来なくなった。  
Res.18 by トロント from トロント 2007/01/03 21:32:10

古き良き思い出というものは、幾重もの乱雑な時の中で抜き取れるちっぽけな、本当にちっぽけな日常の一片であることが多い。私はゆっくりと街を見渡してみた。すると突然、激しく強い風が私の後ろから吹き抜けるのを感じた。街全体を覆っていた薄い膜がめくれ上がり、知らない街並みが剥き出しとなってあらわれた。  
Res.19 by トロント from トロント 2007/01/03 21:41:11

私は山田と落ち合うため待ち合わせの場所へと引き返した。  
Res.20 by 無回答 from バンクーバー 2007/01/03 22:52:33

とぴ主「トロント」のオナニー小説だったら、自分のブログでも作ってやってくれ。みんなの掲示板ですることじゃないだろ。  
Res.21 by たぶん from バンクーバー 2007/01/03 23:16:18

「みんなの掲示板」だからこそ、自分の作品を読んでもらいたいんじゃないかなあ。けどね、視点、描写の勉強をしてからにした方がいいよ。  
Res.22 by 無回答 from バンクーバー 2007/01/04 00:28:01

あれ?これで終わったの?誰か続きかいてちょ。  
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